理研基礎特研の手取り額

2020年4月1日付けで理化学研究所に基礎科学特別研究員として着任しました。理化学研究所は当たり前ですが教育機関・大学ではなく研究機関なので、企業的性格が大きいので、日々その違いを実感していますが、職員は組織によって守られる立場であるということをありがたく感じています。

さて基礎科学特別研究員は手前味噌ながらポスドクとしては優れた待遇です。給与額もさることながら、各種社会保険や住宅手当なども完備です。ポスドクの待遇の比較については奥村さんの記事にまとまっています。
https://oxon.hatenablog.com/entry/20131127/1385515094

基礎科学特別研究員の給与は募集要項に明記されており、2021年度募集の場合だと月額48万7000円です。ではこの額から手取り額がどうなるか、というのがこの記事の主眼です。ただし計算は正確ではない可能性があるので、目安として捉えてください。

月額48万7000円だと年収は584万4000円になります。社会保険はこの額を基準に算出されます。理研では健康保険、厚生年金、企業年金、雇用保険をかけてもらえます (40歳以上だとこれに介護保険が加わります)。各項目の保険料率が定められていますが、ここでは被雇用者の負担は合計してざっくり15%とします。そうすると年間で87万7000円が社会保険料として徴収 (通常は天引き) されます。

社会保険料の他には所得税と住民税が引かれます。所得税の計算には次のサイトを参考にしました。
https://www.tokyozeirishikai.or.jp/general/zei/shotoku/
まず給与所得控除を考えましょう。次のサイトが参考になります。
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm
令和2年度分で該当する330万円-660万円を見ると、給与所得控除額は給与の20%+44万円ということになります。すなわち今回の場合は160万9000円が控除されるので、控除後の金額は413万5000円になります。これを給与所得金額と言います。

実際に課税される金額の計算に用いるのが課税所得金額です。課税所得金額は給与所得金額から社会保険料や生命保険料、基礎控除、扶養控除を引いた額になります。社会保険料は上記のとおり87万7000円でした。生命保険料はここでは考えないこととします。基礎控除は一律38万円です。もし16歳以上の親族を扶養している場合は、1人あたり38万円の控除が追加されます。ここでは独身または配偶者が扶養に入ってない場合を考え、扶養控除は考えません。そうすると控除額は社会保険料と基礎控除を足した125万7000円です。この額を給与所得金額から引いた額287万8000円が課税所得金額になります。

課税所得金額が195万円以上330万円以下の場合、税率は10%で控除額が9万7500円になります (ここでは1000円単位で計算しているので9万8000円としておきましょう)。所得税こそ典型的な累進課税ですね。なお現在は復興特別所得税が課せられており、所得税額の2.1%です。すると所得税額は課税所得金額の10%から控除額を引いた値を1.021倍した値になるので、19万円4000円になります。

最後に住民税を計算します。理化学研究所のある埼玉県和光市では、市民税6%、県民税4%が課税されます。さらに加えて課税対象世帯には一律に市民税3500円、県民税1500円が課税されます。後者を均等割といいます。住民税は実際に居住している場所で課税されますが、概ね都道府県民税と市区町村民税を合わせて税率10%、均等割5000円のようです。これも課税所得金額に適用されるので、住民税は29万3000円になります。

ということで年収が584万4000円に対して、社会保険料が87万7000円、所得税が19万4000円、住民税が29万3000円となりますので、それらを引いた金額は448万円となります。これを12ヶ月で割ると、月額の手取り金額は37万3000円となります。

理研では通勤手当や住宅手当も支給されます。通勤手当は基本的に非課税なので、単純にこの手取り額に上乗せされます。住宅手当は課税対象ですので、上記の金額に足されることとなります。また扶養家族がいれば控除額が増えるので、より手取りは増えることになります。いかがだったでしょうか。研究者といえど収入は大事ですので、考えるきっかけとなれば幸いです。

(2022年8月1日:住宅手当の記述について修正しました。住宅手当は課税対象です。)