今年1月に北海道大学に着任し、札幌に引っ越して2ヶ月が経過しました。真冬に開始した札幌での生活はそれなりに覚悟はしていましたが、実際に住んでみると想像とは異なる部分も様々ありました。現在の札幌は暖かく雪解けも進み、このまま春に突入しそうな勢いですが、雪解けとともに忘れてしまわないうちに、札幌の冬1年目について書き記しておこうと思います。
大変なのは寒さよりも雪
札幌に引っ越しましたと報告すると大抵「寒いでしょう」と言われます。確かに1月は最高気温が0度を上回らない日も多く、数字上では寒いです。しかし、寒さよりも大変なのは雪です。12月から2月にかけて札幌では多くの雪が降ります。札幌市は豪雪地域に指定されていますが、特別豪雪地域には指定されていません。すなわち日本全国を見渡せば札幌よりも雪が降る場所は数多あります。それでも札幌の雪は大変だと思います。その理由をいくつか挙げてみます。
- 12月後半から2月上旬にかけては最高気温が0度を上回らない真冬日が続き、雪が解けにくい
- 氷点下では北陸で用いられる消雪パイプなどの地下水による融雪が出来ないため、道路には常に雪 (圧雪) がある
- 雪が融けないので、道の雪を路肩に寄せる除雪ではやがて限界に達し、雪を堆積場まで輸送する排雪が必要になる
- 12月や2月後半から3月にかけては歩道の雪が日中に融けて夜間に凍ってを繰り返し、路面が一部スケートリンクのように極めて滑りやすくなる
- 低気圧接近時には暴風雪となり、視界が極めて悪くなるため地上交通が麻痺する
厳冬期の札幌は最高気温が0度を上回らない真冬日が続きます。なので降った雪が基本的には融けません。北陸や山陰でも大雪となることがありますが、金沢や松江といった沿岸部の都市は真冬日が続くことは稀で、雪も1週間ほどで融けてしまいます。さらに北陸地方では道路の雪を融かすために地下水を汲み上げる消雪パイプが用いられますが、北海道では逆に凍結の原因となるので使うことが出来ません。したがってとくに1月はほとんどの道路が圧雪状態で、雪の上を歩いたり車が走ったりという状況です。
雪が融けないのに雪が降り続けるということは、雪が溜まる一方ということになります。道路に雪が積もれば除雪をするのが一般的ですが、除雪はあくまで雪を路肩に寄せる作業です。雪が融けないと路肩に雪が溜まる一方で、やがて車線を占領するようになり、もともと4車線だった道路は2車線に、2車線道路はすれ違いが困難な1車線道路へとなってしまいます。このため雪を別の場所にもっていく「排雪」が必要になります。札幌市も排雪に予算をつけて取り組んではいますが、排雪はダンプで雪を堆積場まで何往復も運ぶという作業のため、除雪とは比べ物にならないくらいの時間と労力がかかり、なかなか進みません。とくに今年は1月後半に大雪となったため、積雪量が例年よりも大幅に多くなり、地上交通に影響が出ました。
排雪の問題は道路だけでなく鉄道も同様です。1月の大雪ではJRのダイヤが約1週間に渡って乱れました。これも線路上の雪を排雪する必要があったためです。とくに札幌駅周辺は高架化されたため、線路脇に除雪できる雪の量も限られてしまい、排雪に時間を要してダイヤ乱れが続いたようです。
ちなみに私は勝手に札幌市ではロードヒーティングが充実しているものだと思っていました。ところが近年のスタッドレスタイヤの性能向上で、経費のかかるロードヒーティングは軒並み廃止傾向にあるようです。たまに歩道に全く雪がない区間がありますが、そこは土地の所有者が自前でロードヒーティングをしているケースがほとんどです。
札幌の雪で一番厄介なのはツルツルの路面です。12月や2月後半から3月にかけては歩道の雪が日中に融けて夜間に凍ってを繰り返し、路面が一部スケートリンクのように極めて滑りやすくなり、危険です。札幌市では冬季に道での転倒による救急搬送が増えるそうです。札幌市民は基本的に防滑の靴を履いたり、滑り止めを装着して歩いていますが、それでも滑るときには滑るので万能ではありません。逆に1月など真冬日が続くときは、歩道に新雪が積もるため、そこまで滑りやすくはなりません。冬の始まりと終わりのときにツルツル路面に気をつける必要があります。このため1 km以上の長い距離を冬季間に歩くことはおすすめできません (といいながら私はそれ以上の距離を徒歩通勤し、だんだん慣れてきました)。
札幌では年に数回、暴風雪になります。主に低気圧が直撃するパターンで、暴風と降雪が同時にやってきます。このときは極力外に出るのを諦めるしかありません。地上交通は麻痺しますし、視界はかなり悪くなりますし、雪が体に吹き付けてきて痛いです。また積もった雪が巻き上げられる地吹雪も起こります。地上交通は暴風雪が過ぎ去った後も余波で混乱が続きます。
上記のように札幌は雪の影響を強く受けます。世界的にみても200万人都市でこれほど雪の降る都市はないと言われます。同じ雪の量でも気温や都市部の排雪場所の不足などで札幌の雪は厄介だと感じます。
札幌の住居事情
ここまで雪のことを書きましたが、札幌で居を構える際にも雪や寒さのことをよく考えなければなりません。まずマンションと一軒家のどちらかにするかという問題があります。除雪が圧倒的に楽なのはマンションです。マンションだと管理費に除雪費用が含まれていたり、あるいは共用設備にロードヒーティングが含まれていれば除雪の必要がありません。駐車場も同様にロードヒーティングが入っていればそれほど除雪をする必要がありません。ロードヒーティングの有無は要チェックポイントです。一軒家の場合は広いのと引き換えに自分で除雪をしたり、また排雪を業者に依頼する必要があるなど、何かと手間がかかるようです。
札幌の住居で最も重要なのは暖房設備ではないでしょうか。寒いのでしっかりとした暖房が必要なのは言うまででもないですが、暖房にも都市ガス、プロパン、灯油、エアコンなどがあります。札幌の場合、プロパンガスよりも都市ガスの方がガス代が安く、都市ガス物件が人気です。その分、家賃がプロパン物件と比べてやや高い傾向にあるようですが、それ以上にプロパンガスの暖房費は高くなるという話を聞いたことがありますので、慎重に検討する必要があります。札幌は大都市なので、中心部の新しい物件は全部都市ガスでは、と思っていましたが、実際には中心部の新築物件でもプロパンガス物件が多くあるようです。そのほか最近の札幌は夏も蒸し暑くなってきたため、冷房が入っている方がよい、と言われますが、この記事では冬の札幌についてなので割愛します。
場所も非常に重要ですが、やはり安定した運行という面で地下鉄沿線は人気が高いようです。とくに円山公園、大通、新さっぽろといった主要駅をもつ東西線の人気は高いようです。あとは徒歩で通勤できるという位置も非常に良いと思います。
札幌は生活費が安い都市と言われてきました。実際、国立大学教員の給与に反映される地域手当は東京23区内が20%、名古屋市15%、大阪市12%である中で札幌市は3%と政令指定都市としては低水準です。ところが最近、札幌の家賃や分譲価格は大幅に上昇しており、そこまで安くはなくなってしまいました。中心部の3LDKファミリー向け新築物件では15万円から20万円を超える物件も珍しくありません。
札幌での車生活
札幌では車があったほうが利便性が高いのは間違いありません。冬のツルツルの路面を長距離歩くことや、買い物をして両手いっぱいにものを抱えて歩くのは危険なため、車があると便利です。また雪が解ければ札幌を飛びだして北海道内をドライブするのが今から楽しみでなりません。
一方、冬の運転はやはり特殊な部分が多いです。まず雪が降った直後は路面の新雪がまだ圧雪になっていないため、轍になりやすく、それが原因でスタック車両が発生します。北海道ではスタッドレスタイヤはもちろん装着し、一般車は四駆の車も多いですが、それでもはまってしまうため、大雪の直後はなるべく運転を避けたいものです。またアイスバーンになっている部分も多いので、車間を十分に空けて安全運転したいところです。
冬も終盤になると排雪が入っていない道路では高い雪の壁が出来、見通しが非常に悪くなります。またもともと2車線だった道路は雪のせいで1車線分くらいしか道幅が残されておらず、車がすれ違えません。そのため対向車をよく見ながら譲り合って退避したり、ギリギリまで路肩に寄せたりと運転技能が試されます。私は実家が田舎なので、車がすれ違えない田舎道をよく走っているので比較的慣れていますが、そうでなければとても札幌の冬は運転できなかったでしょう。凍結にばかり目が行きがちですが、狭くなった道路も札幌の運転では避けて通れません。
2月後半になると路面が見えてきます。こうなると非常に運転しやすくなるのですが、ポットホールに注意が必要です。ポットホールはアスファルトに雪解け水が浸透して、凍って融けてを繰り返すことでアスファルトが脆くなり、そこに車が通ることで穴となってしまった部分です。ポットホールを踏んでしまうと振動などで乗り心地が悪くなるのはもちろん、運が悪いとタイヤがパンクして走行不能になってしまいます。順次修復されているようですが、それでもこの時期は路面に注意して走行し、回避あるいは徐行でうまく抜ける必要があります。
新千歳事情
道外に出張するときは必ず新千歳から飛行機移動になります。これは札幌で仕事をする上での宿命ですので、新千歳空港とはうまく付き合わなければなりません。
まず新千歳は雪が降ると航空便のダイヤが乱れます。札幌ではしょっちゅう雪が降っているのに新千歳は雪に弱いのかと思われるかもしれませんが、実は札幌と比べて千歳は雪が少ないのです。詳細は省きますが、飛行場の建設地選定において、札幌近郊では千歳の積雪量がすくないということで選ばれたという経緯があります。なので札幌で降っていても千歳は降っていないということはよくあります。逆に千歳で雪が降ると除雪作業や航空機への防氷剤散布、視界不良などで遅れや欠航が発生することが多くなります。新千歳は便数が多いので、1度遅延が発生すると、その日はずっとその遅延を引きずった運航になってしまいます。なおJALやANAといったフルサービスキャリアは、天候悪化時には無料で便を変更できるので、予定便を変更して影響を最小限にするということも視野に入れましょう。
新千歳で雪が降るのは主に南から雪雲が流れてくる場合と、北西から流れてくる場合があり、厄介なのは後者です。北西から流れ込んでくる場合、新千歳だけでなく札幌から新千歳までのJR沿線や高速道路周辺でも積雪が増え、札幌-新千歳空港間のJRやバスが運休になることがあります。そうすると自家用車でない限り新千歳から脱出する術はありません。JRが止まっているとき、上述の通り便を変更できる場合はなるべく便を変更して、JRが動き出してから新千歳に戻ったほうが良いです。新千歳から出発する場合は諦めましょう。またJRが動かず高速が通れるときは、地下鉄東西線の大谷地駅と空港間の連絡バスのみ運行していたケースが有りました。
このように新千歳が使い物にならなくなるのは月に2回ほどあります。これを多いとみるか少ないと見るかは人それぞれですが、私はなるべく1月2月に出張をいれないようにしようと思います。
札幌ぐらしのいいところ
ここまで雪を中心とした札幌生活のデメリットを書いてきました。夏をまだ経験していないので、それを上回るメリットがあるかどうかはまだわかりませんが (でも夏を経験すれば十中八九メリットが上回ると信じています)、札幌の冬にも魅力はいっぱいあります。
まず意外と晴れの日が多いです。日本海沿岸部の冬はほとんど曇っていて、雨や雪がしょっちゅうというイメージですが、札幌は半数の日が晴れている印象です。晴れの日は雪景色が非常に美しく、200万人都市にいることを忘れさせてくれます。とくに北大構内の雪景色は格別で、気分転換に散歩に出かけたくなります。また札幌は氷点下10度を下回ることは稀で、寒いのは寒いですが、凍えて外を歩けないというほどではありません。むしろ乾燥した風が吹き付ける冬の東京の方が体感温度は寒く感じられるほどです。
食べ物が美味しい、というのは年がら年中そうだと思いますが、中でも海産物は冬が美味しいです。とくに近所の魚屋ではカニが格安で出回り、手軽に堪能することが出来ます。先日はオオズワイガニとタラバガニを2000円で購入し、カニ鍋にして美味しくいただきました。これは道外ではなかなか味わえない贅沢です。また私はいくらが大好物なので、割安で売られている筋子の醤油漬けなども購入します。
どこのスーパーで食材を購入するかはQOLに直結する重要な問題ですが、近所にイオン系列などもある中で最終的によく利用しているのはコープさっぽろです。これまで生協は (大学生協を除いて) ほとんど利用したことがなく、共同購入など面倒に感じていた部分が多かったですが、コープさっぽろは使い勝手が良いです。店舗の品揃えはそれなりに良いのですが、惣菜がこれまで利用してきたどのスーパーと比べても抜群に美味しいです。別海町産牛乳で作ったアイスクリームなど、美味しいプライベートブランド商品も充実しています。さらに配送も共同購入ではなく個別配送で置き配してくれるので、重たいものを購入するときは配送で頼んでおくなど重宝しています。
札幌はどうも水道水が美味しいようです。札幌の水道水は豊平川をメインに取水しているようですが、その水源は山奥から流れてくるミネラル豊富な雪解け水で、また元々の水質もよいので塩素含有量も少ないようです。私はこれまで様々な地域に住んできましたが、札幌の水道水はスイスに次ぐ美味しさで、国内ではダントツだと思います。さらに冬はよく冷えた水が蛇口からそのまま出るので、コップに注ぐだけで冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを味わっているかのようです。
今年は行けていませんが、ウィンタースポーツ勢にはこれとない立地でしょう。札幌ばんけいを始めとして近隣にゲレンデがいっぱいあるので、シーズン券を買って通い詰めている方も多いはずです。
まとめ
札幌は雪に翻弄される大都市であることは間違いありません。本州の大都市と同じような冬の生活は出来ません。一方でデメリットだけでなく、冬の札幌にも多くの魅力があります。そして雪が融けた後の札幌がどのような魅力で溢れているか、いまから楽しみでなりません。これから仕事も忙しくなる時期ですが、札幌生活も楽しみたいと思います。